正確で信頼性ある洞察を入手することは、あらゆる科学的知的財産(IP)戦略の成功にとって欠かせないものですが、化学物質の特許状況の把握では特に重要です。 特許訴求が却下されてしまうリスクや、競合他社が優位に立ってしまうリスク、または事業として研究開発費に何百万ドルもかけたにもかかわらず新規の製品ではなかったことがわかっただけだったと言ったリスクなどを最小限に抑えるためには、どの化学構造が新しいもので、どれがそうでないかを確信を持って知ることが不可欠です。
貴組織のチームでも、そういったリスクを回避するために該当分子と明確に一致する化学物質の知的財産検索をしているはずです。しかし、マルクーシュ構造クレームに埋め込まれている物質を見落としてはいませんか。 マルクーシュ構造は、構造的に類似した物質のグループを効率的に記述するために、世界的な特許請求の範囲で使用されている一般的な化学的簡略表記の一種です。 比較的シンプルなマルクーシュ構造は次のようになります。
マルクーシュ構造の複雑性は様々です。ほんの一握りの特定の置換基を含むものもあれば、発明的に多数の独自の構造を含んだものもあります。 ここでは、化学物質の知的財産の検索におけるマルクーシュに関する一般的な誤解を明確にしておきます。そうすることで、貴組織のチームが知的財産戦略を策定する際に、全体像を包括的に把握できるようになるでしょう。
化学物質の知的財産検索で欠けているもの
化学構造に基づくすべての化学物質の特許の検索にはマルクーシュ構造が含まれるという一般的な誤解があります。 この誤解により重大な化学物質の開示を見落としてしまい、知的財産の現状認識に隙間ができ、機会の見逃しやリスクにつながる可能性があります。 例えば、関心があるかもしれない分子グループの、以下の構造的な説明を考えてください。ここで、Cbは任意の炭素環式基、Akは任意の非置換炭素鎖とします。
こういった一般的な化学構造式のクエリだと、明確に公開された物質を何千も潜在的に示してしまう可能性があります。 ところが、この一般的なクエリに一致する特定の化合物をCAS SciFindernで検索すると、公開されている学術論文、特許、カタログなどにその物質に関する言及は見つかりません。これは一大事です。なぜなら、まったく新しい化合物を発見したわけですから! しかし本当にそうでしょうか。
これが混乱の原因になるのです。 使ったクエリはジェネリック(つまり、多くの潜在的な特定物質を表しています)で、特許のマルクーシュを代表しているように見えますが、実際特許内ではまだこのマルクーシュ構造について検索していません。 特定の化学物質のデータベースに対して検索された広範な一般的なクエリでは、一致する特定の化学構造を開示する回答のみが返ってきます。 特許取得済みのマルクーシュ構造によって保護されている化学スペースの関連分野を網羅している特許は特定されません。これでは、不十分な情報に基づいてビジネス上の意思決定を行ってしまうおそれがあります。 このよくある誤解は、検索プラットフォームによっては、クエリが本質的にマルクーシュであることに基づいて、ジェネリック構造の検索をマルクーシュ検索としていると言う事実によって、より混乱をきたしたものとなってしまいます。
マルクーシュの真実:欠けているものを見つける方法
ジェネリックの化学構造の検索と特許のマルクーシュ構造の検索との大きな違いは、クエリそのものではなく検索対象のデータ収集にあります。 特許のマルクーシュ構造を見つけるには、プラットフォームは検索可能な特許のマルクーシュのデータコレクションにアクセスできなければなりません。 マルクーシュ構造は、検索可能なコンポーネント部分とコネクションに分割する必要があるため、このようなデータコレクションの開発には手間がかかります。 これには、人の持つ高度な化学的専門知識と専門のデータベース、および検索テクノロジーが必要です。 このため、ほとんどの検索プラットフォーム(たとえ化学専門のものであっても)は、このデータを含んでいません。
例に戻って、マルクーシュ検索をSciFindernクエリの範囲に追加すると、この分子と明確に一致する特許が2件見つかり、どちらも当該知的財産戦略に関連しそうです。
PatentPakを使用すると、2回クリックするだけで、付与された特許の全文に含まれる特定の関連訴求に直接アクセスできます。 2つの関連特許が欠落していてもそれほど大したことではないように思われるかもしれませんが、実際には、知的財産戦略が無効になったり、無駄なリソースを大量に費したり、さらに悪いことには訴訟費用が発生する可能性にもつながります。 したがって、完全な化学の知的財産の検索をサポートする知的財産検索プラットフォームまたはサービスを使用することが不可欠です。
化学物質の知的財産状況の総合見解については、CASが最終地点
CASコンテンツコレクションは、検索可能なグローバル特許マルクーシュの開示に関する数少ない情報源の1つです。 1988年から現在までの特許で網羅されている120万以上もの検索可能なマルクーシュ構造を含み、毎日更新されます。 CASのSciFindernは、特定の化学構造の検索と真のマルクーシュ検索のほか、反応検索や参照検索を単一のエンドユーザーインターフェースで利用できる、唯一のプラットフォームです。 あるいは、STNは知的財産の専門家に対しこれらのデータセットへの高度なインタフェースを提供します。 関心の対象であるクエリに一致する新しい情報が公開されたときには、カスタムアラートもあり、情報を最新状態に保つことができます。
これらのツールを使用しても、御社の化学物質の知的財産検索が気密であることを確認するのは困難な場合があります。 そこで、重要な決定点に到達したら、CASの正式なリサーチサービスであるCAS IP Service の専門家によるプロ検索を行うのも価値のあることかもしれません。 知識に富む専門家が関連するすべてのデータベースを検索して、完全な知的財産イメージを把握し、リスクを最小化し、知的財産戦略の機会を最大化できていると言う安心感を提供します。 CASがどのようにお手伝いできるかについては、こちらをご覧ください。